顎関節症の治療について
顎関節症は、適切な治療とセルフケアで症状の改善を行います。
学校歯科健診にも取り入れられている顎関節症は、虫歯、歯周病と並ぶ第三の歯科疾患ともいわれています。
顎が痛む、口が開かないなどの症状が現れるため、硬い食べ物が噛めない、大きな食べ物が食べにくい、顎が疲れるなどの影響が出ます。
しかし、その多くは適切な診察や検査を受け、歯科医師による標準的な治療や自己管理(セルフケア)により、改善できます。
顎関節症の代表的な症状
- 顎が痛む(顎関節痛・咀嚼筋痛)
- 口が開かない(開口障害)
- 顎を動かすと音がする(顎関節雑音)
これらの症状の中で一つ以上の症状があり、同じような症状が出る他の疾患がないと診断された病態を「顎関節症」といいます。
同じような症状が出る疾患例
- 虫歯や歯周病
- 顎関節や咀嚼筋に関する疾患
- 頭痛や神経痛などの口腔顔面痛
- 精神疾患や心身症
顎関節症とは
顎関節症は、顎関節や顎を動かしている咀嚼筋の痛みや顎関節の雑音など、下記のような障害をとりまとめた総括的な診断名です。
- 顎を動かす筋肉の痛みを主な症状とするもの(咀嚼筋痛障害)
- 顎関節の痛みを主な症状とするもの(顎関節痛障害)
- 顎関節の中の関節円板のずれが生じるもの(顎関節円板障害)
- 顎関節を構成する骨に変化が生じる(変形性顎関節
顎関節症の原因
以前は「噛み合わせの悪さ」が原因と考えられていましたが、現在では「多因子病因説」が支持されています。
日常生活を含めた環境や行動、そして習慣や癖、またパーソナルな因子に加え、時間的な因子などが積み重なり、その人の持っている耐久力を超えた場合に症状が出るという考え方です。
環境的なもの | 緊張する仕事、多忙な生活、対人関係の緊張、強いストレスなど |
---|---|
行動的なもの | 硬固物の咀嚼、長時間の咀嚼、楽器演奏(吹奏楽器等)、長時間のパソコン業務、単純作業、重量物運搬、編み物、絵画、料理、歯に力がかかるスポーツなど |
習慣や癖 | 睡眠時・覚醒時の歯ぎしりや食いしばり、日中の姿勢、睡眠時の姿勢など |
パーソナルな問題 | 噛み合わせ、関節の形態、咀嚼筋構成組織、疼痛経験、睡眠障害など |
*因子:ある作用の原因とみられる要素
顎関節症の治療
顎関節症の治療では、歯を削ったり、手術をしない「保存的療法」を基本治療として行い、顎関節症の症状や管理の仕方について患者様にお伝えして、患者様自らが行うセルフケアと合わせて実施します。
*顎関節症の患者様の自然経過を調べた研究によると、時間経過と共に改善し、治癒していく疾患であることが示唆されているという報告もあります。
歯科医院での治療
- 習慣や癖、姿勢や動作などの日常における生活習慣を確認して改善点について指導します。
- 肩・首・顎のストレッチ体操や、セルフマッサージ法を指導します。
- 鎮痛剤や筋弛緩剤など、症状に合わせて薬を投与します。
- 咀嚼筋痛を主訴とする症状にはスプリント療法とよばれるマウスピースを装着する治療を行います。
セルフケア
- 痛みがあるときは、やわらかい物を食べるようにする。
- 痛みを軽減させるために、冷やす。
- 肩・首・顎のストレッチや、マッサージをする。